君の無言は何味?

わたしは呪いの子をひどく怒らせてしまいました。口をきいてくれないので、無言で森の中を歩いていました。

きっかけはささいな口喧嘩でした。旅の道中、何時間か歩いては休憩を繰り返していました。その休憩のときに、飴やチョコレートを2人で食べていました。

「大賢者さんはどうしてそんなにお菓子を持っているの?」

と、呪いの子が問うものですから、

「わたしはモテますからね。バレンタインにたくさん頂くのですよ。」

と、冗談まじりに答えました。
すると彼は黙り込み、眉間に皺を寄せてこちらを見ていました。無言でこちらを睨んでいます。


わたしは御構い無しに「行きますよ。」と呪いの子の手を引いて立ち上がりました。

暗くなったので、わたしたちにしては珍しく宿屋に泊まることにしました。
国境の山の頂上近くにある、シンプルな宿屋です。
部屋を借りて、ハーブティーを入れようと手持ちの薬草を眺めていると、いつの間にか呪いの子の姿がありません。
わたしは(戻ってきたら叱ってやらねば)と、特に探しに行くでもなく、薬草をカップに入れ、お湯を沸かしながら呪いの子を待っていました。

しばらくして。
呪いの子が部屋に戻ってきました。

「今までどこに行ってたんですか。一人で行動するのはまだ危険ですよ。」

わたしは低い声で言い、
呪いの子を叱りました。

「怒らせてしまってごめんなさい…」

呪いの子は涙目でそう言うと、
わたしに何かの包みを差し出しました。

「怒ってるのはあなたの方ですよ」
「僕は怒ってないよ。ただ、大賢者さんがどんなお菓子が好みかわからなくて…」
「この包み、開けてもいいですか。」
「いいよ。」

わたしは包みを開けました。中にはハッカ味の飴が入っていました。

「これをわたしに?」
「うん。大賢者さんは魔法をたくさん使うから……」

なんと優しい子なのでしょう!過去に世界を闇で包んだ者とは思えません。
早速ひとつ舐めてみました。

「懐かしい味がしますね。ありがとうございます。もしかして、昼に無言だったのは…」
「僕も大賢者さんにプレゼントしたくて…何がいいか、何がダメかずっと考えてたんだ。」

わたしは呪いの子の頭を撫で、
抱きしめました。

「そうだ、あなたはホットチョコレートを飲んだことはありますか?ミルクは粉末ですが…ほっとしますよ。二人で飲んで仲直りしましょう。隠し味に紅茶で淹れて、少しだけラム酒を垂らして…」



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