ひとりになりたい

僕は今でも時々思い出す。禍々しい一つの存在として、空高くにいたことを。
手は真っ青に冷えていて、変な髪型で、か細い声で大賢者さんが励ましてくれたこと。

「今日はキュアーをお教えしますよ。光が染み込んで体が元気になる魔法!」

大賢者さんとの旅に慣れてきて、荷物の管理や魔法の練習をしながら、行く先行く先の色んな方のお手伝いをして、人づき合いも教えていただいているんだ。

「まずはお手本としてあなたの手のひらにキュアーをかけますね。」

ガサガサだった手が一気にツヤツヤになったことにはきづいたけれど、全然お手本を見ていなかった。

「…ねえ、大賢者さん、ひとりになりたい。」
「おや。気分が乗りませんか?」
「そうじゃなくて、大賢者さんとひとつになりたい…」

大賢者さんは驚いて僕を二度見した。
鼻血を出していたけど、
すぐに意味に気づいてくれた。

「もしかして、過去のあの姿ですか?」

僕は黙り込む。

「キュアー!!」

僕は淡い光を纏い、光が消えると全身とぅるとぅるになっていた。

「私は今のあなたが好きですし、合体なんかしなくても見守り続けますよ。」

さて、休憩しましょう、と大賢者さんは歌舞伎揚を僕に差し出した。

「おいしいですよ。」

大賢者さんは、優しい方だ。


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