暖炉の前で
「あー寒い寒い。早く雪だるまミルクを飲みたいですね。」
大賢者さんと震えながら、宿屋のドアを開ける。暖炉の熱が暖かく出迎えてくれた。
少し古い宿屋に帰ってきた僕たちは、食堂で雪だるまのカップに入ったミルクを注文したんだ。
「ミルクだけではなく、ホットバタードラムカウにしてください。2杯とも。」
「大賢者さん、それなあに?」
「冬の暖かいカクテルですよ。もしかしてお酒ダメですか?」
「僕はお酒じゃなくていいです。」
僕に手渡されたカップからは、バターとハチミツ、そしてバニラの香りのするものが入っていました。
「うわあ…!おいしい!」
「わたしも小さい頃に母がよく作ってくださいましたよ。ゆっくり飲んでくださいね。」
僕はゆっくりミルクを飲み、ふう、と息をつきました。
「あ、この食堂には絵本がありますね。読んであげますよ。」
大賢者さんは赤い本を手に取ると、僕の前で広げで読みはじめました。
「うさぎのヒロシゲは、プレゼントしてもらったクレヨンで絵を描きはじめました。小さいヒロシゲはまだ文字がわかりません。……」
「ねえ、大賢者さん、」
「なんでしょう、呪いの子さん。」
「僕も今の文字を読めるようになりたい。」
大賢者さんは一瞬びっくりしたみたいだけれど、優しく微笑んでこう言いました。
「いいですよ。今日から少しずつ覚えましょうね。何という単語から知りたいですか?」
「えーと…"あたたかい"がいいな。僕の知ってる文字ではこう書くんだけど。」
「それはですね…」
大賢者さんは、メモを取り出して、ペンで「あたたかい」と書きました。
「へえ!今の文字ってシンプルだね!」
「呪いの子は文盲というわけではなさそうですからすぐに覚えますよ、きっと。さて、絵本の続きを読みましょう。」
僕は大賢者さんと親子のように寄り添いながら、絵本を一緒に読んだ。暖かくて幸せだったよ。
※ホットバターミルクのレシピ。
マグカップを用意し、大さじ1のバターハチミツ、バニラエッセンス2滴を入れたら牛乳120-200ml入れて、電子レンジで2分温める。バニラエッセンスの代わりに大さじ2のラム酒でホットバタードラムカウになる。
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