花畑
大賢者さんはぐっすり眠っている。久々のサイショー国の暖かい陽気に、僕も眠くなってきた。
「せっかくのコーヒーが冷めるよ」
僕はなかなか目を覚まさない大賢者さんの側に行く。手を握ったけど、だらりと落ちる。大賢者さんは動かない。
大賢者さんの周りにはたくさんの花。名も知らぬ蝶たちが周りを飛んでいる。僕と旅を始めて10年。一昨日から大賢者さんは動かない。なんの前触れもなく、動かなくなった。
「素敵な花畑でしょう。この場所を知っている人間はわたしとあなただけです。」
そう言って、花畑に寝転がって、あなたもどうですか、なんて言って。僕は大賢者さんの額にキスをして、「友愛の証ね。」なんて言って笑って。
くしゅん、くしゅん。
呪いの子がくしゃみをしている。テントの中は夜の冷たさが横たわっていて、少し寒いくらいでした。
眠っている呪いの子のおでこを触ると、少し熱いようでした。
「熱があるのかもしれませんね。ちょっと待っててください…」
わたしは外に出て、薬草を摘みに出かけました。さすが花の職業の方々が絶賛するサイショー国だけあって、薬草の花はすぐ集まりました。
わたしは帰ってすぐ、呪いの子の様子を見ました。息をしていません。わたしは慌ててエルフの秘薬を口に含み、抱き起こした呪いの子に口移しで飲ませました。しばらくしても返事はありません。
「し、死ぬな!起きろ!!」
混乱したわたしは呪いの子に往復ビンタをしました。
「痛い…やめて…」
呪いの子がまるで、朝寝坊しかけた学生が朝に叩き起こされるかのようなリアクションをしたものですから、安堵と嬉しさでもう一発殴りました。
「あなた、死にかけていましたよ。」
と、わたしは涙を流しながら言いました。
彼が言うには、夢を見ていて、花畑の中でわたしが死んでいたそうです。
「10年も旅をしてて、花畑でいきなり死んだ…?ああ、そういえばハーブティーを淹れてたんでした。その匂いですかね?今持ってきますね…」
わたしはドライ・エルダーフラワーのハーブティーを呪いの子に手渡しました。
「甘くて美味しいですよ。」
呪いの子は暫くカップを持って黙っていましたが、
「大賢者さんと飲みたい!」
と笑いました。
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