透明で甘いキス

果てしなく透明な水の中。
まるで空を飛ぶかのように、自由に泳げる。

(また、この夢か)

相棒に手を引かれ、先輩は水面まで浮かび上がった。

この甘い海には、だれもいない、なにもない。
なぜなら、先輩の夢だから。
いままではずっと一人きりだった。ひとりのための楽園だった。

だけれど、最近は妙だ。
ただの顔見知りの相棒にもてあそばれるようになったのだ。
相棒が手足をつかんで邪魔をする。
それきりうまく泳げなくなり、力が抜けて体が熱くなる

抱きしめられて、転がるように沈みながら、キスして息が足りなくなる。
あわてて浮上の繰り返し。

嘲るように相棒に似た夢魔は言う。

「俺のこと、好きなんでしょ?相棒が好きだから、俺がこんな姿なんでしょう?」
「でも、ただの顔見知りだ…うあっ?!…」

また、甘い海に溺れる。視界が暗くなる、体が熱くなる、息ができなくなる。
もがきながら夢で息絶える。

ようやく目覚めると、汗だくだった。
夢の終わりに、相棒に化けた悪魔が言ったことが耳に残っている。

「いつものカフェで相棒は待ってる。一人でカプチーノを頼んでる。告白すればいい。
 あっちも同じ夢みてるって夢魔の妹が言ってたからね。」

がばっ!と先輩目覚めた。
いつもより汗だくで、情けないことに鼻血まで出して布団から起き上がった。

夕方。今日はいつもより遅くカフェにきた。
カプチーノをすすっている。すこし頬が赤いようだ。

「こんばんわ、相棒さん。」

驚いた顔で相棒が見上げる。

「あの、えっと、えーと…」

しどろもどろになりながら、二人そろってこういった。

「「甘い海って、あると思う?」」

かあっ、と顔が熱くなる。

「あ、あ、あの、相棒さん、実はあなたのことが…!」
「奇遇だな先輩!私もお前のことが…」

「「友達からでお付き合い願います!」」

また、声がそろった。二人は笑った。

*---*

昔、夢で透明で青い海を自由に泳ぐ夢を見たんですよ。苦しくなくて、どこまでも透明で、素敵な場所でした。


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