雨宿り

先輩は走っていた。真夜中なのに走っていた。
雨宿りするために、つぶれた酒屋の入り口に立った。
ひとつ。はー、とため息をついて、一間おいてから、寒くて寒くて涙を流し始めた。

そこに偶然にも居合わせた相棒が、急に先輩に抱きついたのだ。
「おー!俺のためにカイロがきてくれたー!」
「ちがうわ!!誰がカイロだ!!」

先輩はふりほどいた。涙は止まっていた。

「よし、泣き止んだ。」

相棒はうれしそうだった。

「お詫びにお前にココア買ってやるよ。それ飲んであったまれよ」

相棒が小銭入れを出そうとしたが、それを押しのけて先輩が相棒を抱きしめた。

「やっぱ君のカイロがいい」
「そうかそうか、よしよし…ここじゃなんだし、俺の家で朝まで過ごそうよ。ゲームあるし。シャワー浴びてもいいし」

翌朝、先輩は風邪を引いた。熱を出して、相棒の布団の中にいる。

「シャワー浴びたのに手遅れだったか…はい、おかゆ、あーんして」

先輩が顔を真っ赤にしたのは、風邪の熱だけではなかった。


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