雨宿り
先輩は走っていた。真夜中なのに走っていた。
雨宿りするために、つぶれた酒屋の入り口に立った。
ひとつ。はー、とため息をついて、一間おいてから、寒くて寒くて涙を流し始めた。
そこに偶然にも居合わせた相棒が、急に先輩に抱きついたのだ。
「おー!俺のためにカイロがきてくれたー!」
「ちがうわ!!誰がカイロだ!!」
先輩はふりほどいた。涙は止まっていた。
「よし、泣き止んだ。」
相棒はうれしそうだった。
「お詫びにお前にココア買ってやるよ。それ飲んであったまれよ」
相棒が小銭入れを出そうとしたが、それを押しのけて先輩が相棒を抱きしめた。
「やっぱ君のカイロがいい」
「そうかそうか、よしよし…ここじゃなんだし、俺の家で朝まで過ごそうよ。ゲームあるし。シャワー浴びてもいいし」
翌朝、先輩は風邪を引いた。熱を出して、相棒の布団の中にいる。
「シャワー浴びたのに手遅れだったか…はい、おかゆ、あーんして」
先輩が顔を真っ赤にしたのは、風邪の熱だけではなかった。
[ 2/15 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
白昼夢がお送りします。