「いわゆる白馬の王子様なんてものをね、幼い私は馬鹿正直に信じていたのよ」
そんなものいるわけがないってのにね、と私は彼に向かって話しかける。
彼から特に返事が返ってこないので話を続ける。
「でも私の物語にあったのは義理の両親と、私が殺した死体だけだったわ。
あの人たちは結局私を殺人鬼として使っているだけだった。」
でも、
「あの人たちはあなたのその剣のサビになったんでしょう?」
彼は無言で頷いた。銀色の髪がさらさらと揺れる。
「じゃあほら、私もさっさとそうしてよ。」
もうこの世界に未練なんて無いの。
でもそう言った私に彼が初めて返事をした。
「それはできねえなぁ」
「え?」
お前は殺さず連れてこい、という命令だぁ。と彼はいう。
「お前は俺らの仲間になるんだ」
「…………!?」
彼は私を抱え上げて担ぐ。
「軽いぞぉお前」
余計なお世話だ、という反論は彼の、ほんとにお前が暗殺者なんて信じらんねぇなぁ、という言葉にかきけされた。
「ねぇ、」
「なんだぁ?」
「私をこんなくそったれなところから連れ出してくれて本当にありがとう」
そういうと彼はそんなんじゃねぇよ、命令だったからなぁ、と言った。
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365「窓辺」没作品。窓辺が一文字も出てこなかったため。