彼にとっての雨はまだ止まない。
あのときあの人間が死んで、それから、その人間に別れを告げたその日、葬式の日には雨が降っていて。
それからというもの彼にとっての雨はますます酷く降り続いている。
「アマイモン、雨が降りこんでしまう。窓を閉めてくれ」
今日は、こんなに晴天なのに。
「はい、兄上」
雨は、嫌いになった。
もういい加減止んでもいいのに。雨季でもないくせに。この国にそんな長い雨季はない。
雨のときの兄上は、どこかに消えてしまいそうだ。
フジモト、おまえが連れて行くのか。
でも、お前なんか兄上は渡さない。
「……置いていったくせに。」
「アマイモン、何をしている?」
「てるてる坊主を作っています。雨が早く止むように」