めがね


「なぁ」
「なんですか真太さん」
「眼鏡貸して」
「眼鏡?」
「そ、それ」
そう言って私の顔(の眼鏡)をぴっと指差す。相変わらず指はきれいだなぁ。インクで汚れてるけど。

「でもこんな黒ぶち参考になります?」
渡しながら訊く
「なるなる。がり勉設定だし。眼鏡のやつ。」
「へー」

眼鏡がないと何もできないので真太さんの後ろで床に座る
眼鏡をいじってなんか描いてる真太さんの後姿をぼーっと眺める。
すると一段落したらしく眼鏡をひょいとかけ

「うぉ」

よろけた。そして眼鏡を外さずに
「これ度ぉ強いな」
と私の方に来ようとして

「あ」

バランス崩して倒れ――――こまれた

「おもっ!」
「あっわりぃ!」
真太さんの下敷きになったわけである。ちなみに私は裸眼0.1未満だ。
そして福田さんはなまじ目がいい。
後、下敷きは下敷きだ。押し倒されたわけではない。

とりあえず起き上がってもらう。さすがにどいてもらわないと本当につぶれる。
「あ、眼鏡返すわ。ありがとな」
そう言って私に眼鏡を手渡す
「どういたしまして」
真太さんの顔が近い。起き上がった後ずっと私の前から動こうとせず眼鏡返した後も私の顔を見つめている。
「あの、真太さん?」
私が怪訝な顔をするといきなり抱き寄せられて軽くキスをされた。
「やっぱお前眼鏡無くてもかわいいよ」
「え」
「えってなんだよ」
不機嫌そうな顔になる。
「わかんないなら何回でもやるからな」
「ちょっとそれはやめてください」

私の心臓が持ちません