睫毛が重なる距離にて


電車の振動と睡魔の関係性については、医学的に証明されているのでしょうか。

私の肩にもたれて健やかな寝息をたてている彼女をみて私はふと、そんなことを思いました。

けれど別段それは重要なことではないのです。

挑戦者とサブウェイマスター、というただそれだけの間柄ですが、これではまるで。

「……ん、」

ぱちりと彼女が目を覚ましました。ぱちぱちと何度か瞬きをしている彼女。

その顔を覗き込んでいたものですから、今や互いの物理的な距離はあわやまつげすら重なってしまうのではという程、だったのです。

ひゃあ。と彼女は驚いたような声をあげ慌てて私に謝罪しました。

「お気になさらず」そう私は答えました。

「それに、おこがましいことではありますが、まるで貴女さまと恋人同士のようなことができた、というのは私には大変嬉しいことでございます」


睫毛が重なる距離にて



[目次]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -