その左手に隠されたもの
「雁夜」
彼の手は恐ろしいほどに綺麗で、自分のやけどだらけの手が、とっても醜く見えたのを今も覚えている。
(随分と、やつれていたが)
まるで死人のようだったが、目だけはぎらぎらと輝いていた。
それが自分のせいだと思うと、私は。
「雁夜、すまないね。」
心にもない謝罪だと解釈され、睨まれる。
「私は、あの子を間桐にやったことは後悔していない。でもね、」
君を巻き込んでしまったことは、少々悔いているんだよ。
雁夜君、家出してからずっと、のびのびと過ごしていたわ、と笑っていた妻の顔が思い起こされた。
その左手に隠されたもの
[目次]