離ればなれの幸福論
お前は俺と居ないほうが幸せだろう、と言われて、そんなことないよ、と数拍遅れて言ったその反論はひどく滑稽に響いた。
「なんで、そんなことを言うの?」
「なんで、俺を引きとめようとする?」
質問を質問で返されるのには弱いのだ、彼はそれを知っている。
「お前は俺に同情して俺と一緒にいる。それは俺にとってもお前にとっても好ましくない事だ。」
俺はお前の幸せを願っている、だなんて。そんなことを言われたら、引き下がるしかない。食い下がれるはずがない。
でも、お幸せに、なんて、言えなかったのだ。
離ればなれの幸福論
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