白で死んで 黒で生きる

好き、大好き、そう言葉を重ねる彼の手には、淡く光るペーパーナイフが握られていた。
「クダリ、さ、ん、」

「あのね君がどこにも行かないようにね、これで僕の部屋に縫いとめておかなくっちゃって、ね、いい考えだと思うんだ、ね」

そうして彼が私の右手にペーパーナイフを押し当てると、私のてのひらはいとも簡単に裂けてどくどくと血が流れ出してこのままでは私は痛みで、死んでしまう。

「起きて、くださいまし」

私の顔を覗き込んでいたのはノボリさんで、壁に押し付けられていたはずだったのに、ベッドに寝かされていた。あ、れ?

「随分うなされていたようですが、」

「クダリさんは、どうしたんです、」

私がそう訊くとノボリさんは表情を曇らせた。

「それが、昨日から行方を眩ませているのです。」

え、と呟いた私を見てご心配なく、どうせひょっこり帰ってきますよ、と彼は言う

「そんなことより、ご自分の心配をなさってくださいまし。貴女様は過労で倒れていたのですよ。」

ですから私が勝手ながら、私の家でこうして介抱している次第であります。

「ありがとうございます……」

くれぐれも無理はなさりませんよう、と彼は私の頭を撫でて台所へ消えた。

台所のほうにちらりとポケモンの影が見えたような気がしたけれど、彼の手持ちにリグレーなんていたかしら。

白で死んで 黒で生きる





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