この両腕で飛べたらいい

「空を飛べる魔術とかってあるのか」

雁夜が真剣な顔をしてそう僕に訊いてきた。

「ある、とは思うけれど僕はできあいなぁ」

魔術嫌いの彼が唐突にそんな事を言うのが珍しかったものだからつい何故?と聞いてしまった。君は空を飛びたいのかいとも。

彼はぱくぱくと口を開閉させた。顔が真っ赤なのはあまりに子供らしい事を言ってしまったという照れからなのかもしれない。他の奴には言うなよ!と叫ばれた

分かったよ、言わない。そう僕は言った。

「僕がもし飛べる魔術を覚えたらまず一番に、君を抱えてとんであげるよ」

雁夜は驚いたように目をぱちぱちさせてふうとため息をひとつしそして、それじゃ頼むと僕に言った

この両腕で飛べたらいい




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