傷付くと傷付けるは同じこと
ヴァリアーにはどちらかといえば快楽殺人者が多いから、奴みたいなのは稀である。
もっとも、奴みたいなのが今までぜんぜんいなかった訳じゃあなく、定期的に現れては、すぐに死んでいっただけなのだ。
だから奴もそのうちの一人だと思っていた。ほんのガキであるあいつは相手を躊躇なく殺してそして、必ずその夜は泣いていた。
同じ年であるベルとはまったく正反対で、一人で溜め込んでは爆発することもなくひっそりと一人で泣いていたのだ。
で、なぜオレがそれを知ったかというと(もっとも今知ったのだが)
「ねぇ隊長たるもの部下の様子は把握しておくべきだと思わない?」
ルッスーリアがそう含みのある笑顔で言ってきたものだから行かざるをえなくなったのだ。断じて自分からじゃない。
入るぞとノックしてから返答を待たずにドアを開けた。開いていた(早く終わらせたかったのだ)
それはつまり奴に顔を隠す暇さえ与えなかったということで、奴は毛布を掴んで静止していた。
隊長、と奴は間抜けな声を出す。その赤く腫れた目元をオレはなぜか直視できなかった。
「あ、」
あまり無理はするなよとそう言って頭をわしわしと撫でた。
どうしていいのかわからなかったのだ。
傷付くと傷付けるは同じこと
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