届かぬ声は文殻に滲む

彼女が急に涙を流したので僕は焦る。
どうしたの、と僕は聞くが彼女は答えてくれない。ぱくぱくと口をむなしく開閉するだけだ。
「ねぇ、何で泣いているの!?」

僕はつい声を荒げる。彼女はいっそう涙を流す。
彼女は自分の喉につい、と指を指す。そうして両手の人差し指を交差させる。
あぁ、と僕はやっと気がつく。そうか、彼女はしゃべれないんだ。

届かぬ声は文殻に滲む




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