五感が覚えている

そういえば彼女は香水をつけていた。と、そんなことをふと思い出した。
夕方、帰宅ラッシュ。八割がたきっといつもと変わらない顔ぶれの人々がめいめいの奉公を見ている。
その中に彼女もいるのだろうか。僕は快速の去って行ったホームに立ち尽くす。
まだ、彼女の残り香は僕にまとわりついている。
僕の部屋からやっと消えた匂い。
彼女の声は今も鼓膜に貼りついて、僕の名前を呼んでいる。

五感が覚えている




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