背徳の味を知っているか


こんなのは絶対に間違っている、と多田は思った。
「なぁ、行天、やめろ、」
だが多田に、この男が止められたことなんて数えるほど――あればいいほうだ。
「多田を見てるとさぁ、なんかこう、」
ムラムラする、とそう首をかしげる行天
多田は背筋に嫌な予感を感じる。ここ最近熱心にしていた筋トレのせいか、行天の体はみっしりと重い。腕を掴んでいるその力は、多田に振りほどけるものではなかった。
「お前、こういうのには興味ないんじゃなかったのかよ」
ないよ、と行天は答える。
「でも多田とならいいかなって」
いいわけがないだろう、と怒鳴りつけたかったが、中途半端な姿勢のせいでうまく腹に力が入らなかった。
「何より男同士なら、子供ができない」
行天が手を動かした拍子に、多田の視界に行天の小指が映った。
多田から一瞬だけ力が抜けたことを感じて行天は笑う。
「あんた本当、やさしすぎ」

背徳の味を知っているか



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