この心臓を引き換えにしたとして

ぐちゃり、と彼女の胸のあたりに重たい音がした。
見れば彼女の真っ白な服はそのあたりだけつぶれたような、赤いしぶきが飛んでいた。
何をしているの、と。僕はやっと口を開く。
彼女は自分の胸からつかみ出した小さな赤い塊を僕の手に乗せた。
そのせいで真っ白な僕の手袋は赤錆色に染まる。ぽたり、とたれた血は僕のコートも、靴も何もかも汚していく。彼女はかすかに唇を震わせる。

「持っていて」

彼女はたしかに、そう言った。

この心臓を引き換えにしたとして



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