あの人は熟れた果実を思わせる
別に、老けているとか言うつもりはないし。大人びているという言葉は中々に近いかもしれないけれど、それだけではとても表しきれないのだ。
ぼんやりと俺は彼女と同じ角度で頬杖をついて、彼女のほうを見る。窓から見える青い空をバックに彼女は伏し目がちに、なにかを考えている。
あのうすいまぶたの下に、銀河をたたえたような瞳が隠れている。
ごくり、と俺は生唾を飲み込む。いやにその音が大きく聞こえる。
彼女の頬は、いつも薄く色づいている。それに唇なんて、まるでおいしそうな、
あの人は熟れた果実を思わせる
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