存在を刻むための数式

彼の筆跡はまるで整っていて。でも針のように細かった。
私の書く数字はてんでばらばらの方向を向いているのに彼の書く数式はみんな同じ前を向いて行進している。

「憧れちゃうわ、きれいな字を書ける人って」
「こんなの普通だろ」
かれは顔を上げずに答えた
「私にとっては普通じゃないよ」
特別だよ、と私は言う。彼のメタリックなシャープペンシルがからん、と落ちる。
彼は顔を覆う。だけれど覆いきれてない耳が赤い。

存在を刻むための数式



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