悪魔を孕んだとき
私のおなかには、何かがいるのです。
熱心な信者である彼女は、そう涙をはらはらと流しながら言った。
彼女は己の腹をしきりに撫でている。が、綺礼にはそこはただ平らに凹んでいるようにしか見えなかった。何もそこにはないでしょう、そう言いかけて思いとどまる。
綺礼は唇の端を吊り上げる。処女受胎、そんな四文字を綺礼は彼女に向かい吐いた。
彼女の顔に浮かんだ不安はもう、数秒前のそれとは違う種類だ。
綺礼の背筋は、彼女の腹部から感じるびりびりとした魔力に粟立っていた。
悪魔を孕んだとき
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