いつかは途切れてしまう
美術室の床にてんてんと落ちている絵の具を辿って、俺は彼女のカンバスにたどり着いた。
力強いタッチで描かれているのは、ここから見える体育館だ。
「うまいもんだな」
そうかしら、と彼女はつまらなそうに言う。
「描きたいものが描けないのよ。だからね、やる気というかモチベーションの維持が、ね。」
途切れちゃった。という彼女の持つ筆からぽたり、と絵の具が滴り落ちた。
「そりゃいわゆるスランプとかか?」
「ちょっと違う。描きたいモチーフが描けない、うぅん、と。私の精神的なものじゃなくて……勇気が出ないだけというか……?」
俺は、彼女の言いたいことがまとまるまで待つ。彼女は意を決したように筆をびしぃと俺に突きつける。
「だからね澤村君!私の絵のモデルになってくれませんか!」
これを言う勇気が出なかっただけなのよ、と彼女は後に語った
いつかは途切れてしまう
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