亡骸を慈しむことさえ赦されず

私が死んだら死体にキスしてから、燃やしてよと生前頼まれた覚えがあるのだが、

あれはたかがお互い冗談口だったのだ。仮にもこんな仕事をしているのにこういう場面を想定してなかったのだなんて、平和ぼけをしていたんだろう。

回収された奴の死体は頭部が綺麗にふっとばされていた。

いつのまにか死体安置所にはオレ以外誰もいなくなっていた。

こういうときだけ気を利かせやがってとオレは嘆息する。

ごめんなぁ、と言いながらオレは首筋にキスをした。

ひどくかたくて冷たい感触がした。


亡骸を慈しむことさえ赦されず



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