喪失が嘘だと思えた日々を

ガラスが割れるようなイメージを抱いていた。音を立てて砕け、あとには破片しか残らない。触れたら身を裂かれるような痛みがある。

(けれど実際は。)


残骸が残ればまだ救いがあった。それすらなかった。

(俺は何を油断していたのだろう。)

彼の赤い瞳はいまや跡形もなくこの世から消えてしまった。

そんな日はこない、と来るはずがない、とどこかで思っていた。

俺たちはあまりに長い時間を生きすぎていた。

(形あるものは、いつか、)

なぜそんな簡単なことを忘れてしまっていたのだろう。



喪失が嘘だと思えた日々を




[目次]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -