誰も彼もが一方通行なままで

(あーあ、いやになっちゃう!)

僕がいつも目で追ってしまう可愛らしい彼女。すらりと伸びた長い足を僕はじろじろ見ないように意識する。彼女は大量の書類を抱えて早足で進む。いつもより高いヒールの靴は、いかにも慣れていなさそうだ。

「あっ、」

ほら。案の定彼女はつんのめった拍子に書類を床にばらまいてしまう。
僕は彼女の元に駆け寄ろうとして、寸前で留まる。

「どうなさいましたか」

彼女が緊張するのがわかる。でも悪い意味じゃなくて。きっと彼女の頬はかすかにばら色だ。

ノボリは、そんな彼女の様子に気がつくこともなくさっさと手際よく書類を拾い集めて手渡す。この鈍感。と僕は怒鳴りつけたくなるけどあまりに理不尽だから絶対にしない。

そもそもノボリは、彼女でない女の子が好きなのだ。


誰も彼もが一方通行なままで



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テーマ「人外ファンタジー」
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