惚れた腫れたを咀嚼してみたい
「恋というのはどういう味がするものなのですかね」
ぐにぐにと唇の先で、桃色のグミを弄びながら彼女はそう言った。
「『それを僕に聞くのは、』『お門違いというものじゃないのかな?』」
「でも先輩は、恋をしたことがおありでしょう?」
「『あんなのは恋と呼べないさ』『そもそも男子にそういうことを聞くもんじゃないよ』『先輩としての忠告だ』」
彼女は弄んでいたグミをぱくり。と鯉のように飲み込んで笑った。
「誰にでも聞きやしませんよ。これでも私、とっても引っ込み思案なので。先輩にだから聞いてるんです」
「『…………』『参ったねどうも』『僕は女子に軽蔑されこそすれ、そんな思わせぶりなこと、言われたことないよ』」
「思わせぶり、じゃないですよ。少々遠まわしがすぎたかもしれないのはごめんなさい。私先輩のこと好きですよ」
「『…………これはほんとに、参ったね』」
惚れた腫れたを咀嚼してみたい
[目次]