妄言すら恍惚として

「結婚、そう、結婚しましょう」
何を言っているのだこの女は、と思った。

「だって、だってねもう私貴方の、インゴのこと充分に知っているのよ」

「貴女が私のことをどれだけ知っていようと私はあなたのことをぜんぜんまったくこれっぽっちも知らないのですけれど」
彼女は整った顔を傾げました。きょとん。
「それがどうしたというの?私があなたを知っていれば、わかっていれば、存在を認識していれば、それでいいじゃないの。ね、私間違ったこと言ってるかしら」
「……HAッ!」
久々に寒気が背中を走り抜けました。
あぁこの方は、いやこいつは、気が違ってしまっている。
「間違っておりますよ。えぇ、間違っていますとも」
私は彼女をまっすぐに見つめてそう言いました。
「ついでに私のことを、呼び捨てなどしないでくださいますでしょうか。虫唾が走りますので」

妄言すら恍惚として




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