吐き出された産声

ぴちゃん、と水音がした。
(嘘だろう、ここは地底の国の、はずなのに)

雨漏りなんてしていようものならば大事件だ、と私はこの国を統べる片割れの彼のもとへゆこうとした。まっすぐのホームを駆けていくと、彼がいた。

「ノボリさん、あの、水が漏れているみたいです」
彼は首をかしげました。
「そんなこと、ありうるはずないのですが」
「でも、私は確かに」
私は今しがた駆けてきた道を、彼を連れて戻ろうとした。しかし地面を踏みしめた足からはいつものような硬いコンクリートの音はせずその代わりにぴちゃり、と塗れた音が、
見下ろすと線路はもうすでに水で満たされていて黄色い線の向こう側から、じわじわとこちらに溢れてきていた。
「ノボリさん!」
私が声を荒げても彼は動じなかった。
むしろ普段は絶対に見せない笑みすらうっすらと浮かべている。
「何も心配することはありません、」
なぜならここは、今から生まれ変わるのですから

吐き出された産声




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