落胆した偽善のもとに
殺さないで。そう言って彼女はいやいやと首を振った。
「そんなことを言われても、あれはもう君の知っているお兄さんじゃないんだよ」
涙と血でべちょべちょになっても、彼女はひかなかった。
ず、と彼女の兄だったそれが彼女の後ろで起き上がるのが見えた。
「頼むから、聞き分けてくれ!」
大鎌を模した腕が彼女に振り下ろされようとして、僕は、その虚に切りかかった。
彼女が目を、見開いていた。
落魄した偽善のもとに
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