間接的な繋がりだけでは足りなくて
この学校の狭い小さな図書室を利用する、生徒すらそもそもいないのに教師が利用するなんて私の中では相当の珍事だったのだ。
「武田せんせー」
カウンターのこちら側から私が手を振ると先生はほにゃ、と表情を崩してこちらに近づいてきた。
「あのですね、バレーボールの本ってどこにあるかわかりますか?」
「バレーボール、ですね」
そういえば今年度から顧問になられたのだっけ。私はカウンターを出てスポーツの棚に向かう。背表紙が黄ばんでいるものしかないけれど、せめてできるだけ新しいものをチョイスする。
「このへんですか」
「ありがとうございますね、」
さっきよりもパワーアップする笑顔。それに謝辞のあとにつけられた私の苗字。
(覚えていてくださったのか)
別に彼の担任している学年でもなく、去年今年と一教科のみ受け持ってもらっただけの関係だ。しかしうぬぼれてはいけない。そう、私は生徒だし彼は先生だ。
「あの、」
誰もいない図書室に、私の声が響く。
「頑張ってくださいね、」
言ってしまってから失礼だったかな、と思えてきて私は下を向いてしまう。
先生はなぜかすこしだけびっくりしたようだった、けれど。もう一度彼はありがとうございます、と笑った。
間接的な繋がりだけでは足りなくて
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