望まなければ孕むこともない
「望まなければ孕むこともない、わ。」
彼女ははらり、と落ちた己の黒い髪の毛を耳にかけなおした。
私の首筋をそっとなぞって、唇を近づけていく。
「ペトロフさん、とっても色、白いですね。私より白いんじゃあないですか。人形みたい。」
ふふ、と彼女は楽しそうに笑う。彼女の手が触れたところが熱い。
彼女の体温は私と正反対に、高いのだ。
「こんなことをして、何になるというのです?」
彼女はうれしそうに答える。いいえ、何にもなりません。
「私が、楽しいだけなのですよ。ペトロフさん。何かあったらむしろ、困るじゃあないですか」
望まなければ孕むこともない
[目次]