避け続けた運命から

ひた、と蟲蔵に小さな足音が響いた。

紫色の瞳は光を映さない。雁夜はその事実を飲み込んで、こぶしを握った。

これは、俺のせいだ。雁夜は誰にともなくつぶやく。

「ごめんな、葵さん。俺のせいで、こんな、こんなつらい目に、」

紫色の瞳が雁夜のほうを向く。されどその瞳は雁夜を映してはいない。

「桜ちゃん、」

雁夜の呼びかけに少女は答えない。いや、何かをつぶやきかけて口を閉じたのだ。

(あなたも私を見ていないじゃない)


避け続けた運命から



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