避け続けた運命から
ひた、と蟲蔵に小さな足音が響いた。
紫色の瞳は光を映さない。雁夜はその事実を飲み込んで、こぶしを握った。
これは、俺のせいだ。雁夜は誰にともなくつぶやく。
「ごめんな、葵さん。俺のせいで、こんな、こんなつらい目に、」
紫色の瞳が雁夜のほうを向く。されどその瞳は雁夜を映してはいない。
「桜ちゃん、」
雁夜の呼びかけに少女は答えない。いや、何かをつぶやきかけて口を閉じたのだ。
(あなたも私を見ていないじゃない)
避け続けた運命から
[
目次
]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -