離れたくないのに

三月とはいえ、朝方はまだまだ冷え込む。
私は冷たくなりかけている足を布団の中につっこんだ。
あと十分。とこの三年間なんど思ったことか。きっと365かけることの三年分よりはさすがに少ないと思うのだけれど。そしてこれから三年間また思うのだろう。そんな馬鹿なことを考えながらあと十秒で起きよう、と決意を固める。

はたして一分くらいしたあと私は置き上がった。カーテンを開けるとまるで青ペンキを一面にぶちまけたような空模様だった。これで桜なんか咲いていれば完璧なのだろうけれどそれは入学式までおあずけだ。
最後となる中学制服の着替えを終え、私は食卓へつく。
りんごジャムをたっぷりとのせたトーストを一口かじったところで私はふ、と考える。

(あぁ、そういえば今日で高尾君ともお別れなんだ)

たしかにある程度家は近いし完全に会えなくなるわけではないのだろうけれど、これからは週五日間もれなく会って馬鹿な話をすることもないのかと思うと、寂しいようなむなしいような、心にぽっかりと穴が開いてしまったような形容しがたい感情が、芯からこんこんとわいてくるのだった

離れたくないのに



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テーマ「人外ファンタジー」
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