静寂に包まれた愛しさ
彼女をあてがっておくとギルガメッシュが静かになるというので必然的に彼女はずっと彼の隣にいることになった。
それを時臣は満足そうに、そして微笑ましげに眺めていた。
ギルガメッシュも彼女も喋らず、時々視線を合わせたり、ギルガメッシュが彼女のやわらかそうな栗色の髪を撫でたりするのみである。
(世界にその名を轟かせた王がまるで、初恋の人に相対する少年のようじゃないか)
互いに何も言葉を交わさずともすべて分かっていると言わんばかりのその態度は、
残虐で絶対的な自信を持つあの英雄王とまるで結びつかず、初めて見たときには驚いたものだ。
そもそも彼女から彼を見つけたのか、彼が彼女をさらったのかすら分からないのだ。
気がついたら彼の隣には彼女がいた。何者かも分からなかった。危険な者かもしれないけれどギルガメッシュが彼女を離さないのだ。
「なぁ、我のどんな宝具より、お前は美しい」
彼女はぱちぱちとまばたきをしただけで何も答えなかった。
彼女が口を利いたところを、時臣は見たことがない。
静寂に包まれた愛しさ
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