out to me
高尾君。彼女は俺をそんな風に呼ぶ。真ちゃんのことも「緑間君」まぁ言ってしまえば、ほかの男子のこともみんな平等に、苗字にさん付けだ。
(いや、一人だけ彼女が名前呼びする男子がいる、なんてことあったら困るんだけど)
万が一にでもそんなことになったら俺はひそかに、けれど確実にへこむ。
自分でもちょっと、いやかなり女々しいなぁとは思う。というかあまり話したことのない(彼女はあまり男子と話さない)女子をどうして好きになったのかよくわからない。
いつのまにか彼女を好きという気持ちだけが自分の頭の中に住みついていたのだ。
無碍にでていけということもできない。
「あの、高尾君」
とりあえず今自分は、些細な用事のたび彼女に苗字を呼んでもらえるだけでわりと幸せだ。
out to me
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