血潮と踊る

ぶしゅ、と間の抜けた音がして、勢いよく血が噴出すのが見えた。
ごとり。一泊遅れてその体は崩れ落ちる。
今しがた死んだ男に作られたオートマタであるところのワタシは、動力源がつぶされてしまったのできっともうすぐ停止する。ワタシはその元凶たる男に話しかけた。
なぁ。
「なぁ、殺せよ」
「ずいぶんと口の悪い人形だな。ほうっておいても君は停止してしまうんだろ」
「そうしてこのワタシの抜け殻を、マジュツキョウカイとやらに持っていくんだろう」
よくわかっているじゃないか、と彼はタバコの煙を吐き出す。
殺伐。その言葉そのもののような男だった。
ワタシは隠し持っていたナイフを取り出す。彼は身構えてすらいない。実際それでいいのだが。ワタシは自分の喉に向かってナイフを突き当て、
ぱん、と乾いた間の抜けた音が手元でしたようなきがした。熱い鉄を押し当てられた感覚。ワタシは倒れ伏す。手から赤い鉄くさい液体が流れ出す。ずきりと神経がうずく。痛い。
しばらく忘れていた感情が頭を埋め尽くす。痛い。どうして。ワタシは。だって、ワタシ、ワタシは、血の流れていない、痛みを感じないオートマタじゃあなかったか。かすんだ視界で男をにらむ。
遠くなる意識の中に彼の声が響く。

「気が変わった。別に持っていくのは君じゃなくていいしね。ひとつだけ教えてあげる。君は人形ではない。魔術で頭と体をいじくりまわされた、ただの人形さ」

血潮と踊る



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テーマ「人外ファンタジー」
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