さよならと手を振る代わりに

がったん、と電車が大きく揺れた。
鉄橋にさしかかったのだ。川原が下に見える。
この橋を渡りきったら、彼女の最寄り駅だ。
こぶしひとつ分の距離を開けて隣に座っている彼女を研磨はちらりと盗み見る
「!」
彼女の正面顔とふいに目が合った。二人ともすぐに目をそらす。
なにやらむずがゆいような笑い出してしまいそうな心持になり研磨はうつむく。
電車はもう駅のホームに停車していた。ドアがなめらかに開く。彼女が席を立つ。
「じゃあね」
彼女は手を振る。研磨も手を振り替えしながら思う。

目が合っただけでこれ、なら、手をつないでしまったりしたならばいったい俺たちどうなってしまうのだろうか。

さよならと手を振る代わりに



[目次]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -