赤い糸で結んでいて
私の小指には赤い糸が結ばれていた、それは彼の小指につながっていた。
「残念だけど、お嬢ちゃん。それは錯覚だよ」
彼は面妖な発音で怪異の名を告げた。
「お嬢ちゃんの運命の相手がいるとするならばそれは僕じゃないし、僕に運命の相手だなんてそんな、甘ったるいものは存在しないさ」
彼は小指を立ててみせる。つまり君はこれに踊らされているだけなのさ。
「そんなことないです」
「いいや、そんなことなのさ」
彼ははさみをもっていた。銀の光る大きな鋏だ。
彼は赤いその糸をつまみあげる。冷たい音が響いて糸が床に落ちる。じゃきん
赤い糸で結んでいて
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