理不尽な葬列

かつ、とコンクリートにヒールを打ち付ける音が聞こえた。
慣れないネクタイを気にしていたトウヤは振り返る。
今日は二人とも黒尽くめだ。微妙に形の違う喪服を着たノボリとクダリはトウヤに頭を下げた。トウヤもあわてて頭を下げる。
「このたびはお悔やみ申し上げます」
トウヤがそう言うとノボリは目を伏せた。
「彼女もきっと、トウヤ様が来てくださったことを喜んでいると思います」
彼女の横たわった棺のとびらが閉じられる。彼女の表情はとても安らかだった。

(殺されて死んだというのに)

「まるで眠っているようだったでしょう」
いつのまにかノボリがトウヤの後ろに立っていた。
ノボリの目元はいつもと同じく白く乾いたままだった。
「そうなるようにしたのですから」
どういうことですか、とトウヤが聞こうとするとノボリはもう目の前にいなかった。
頬につめたいしずくが落ちる。鉛色の空から落下してきたものだった。あっという間に強くなった雨はのろのろと進む葬列の輪郭をぼやけさせた

理不尽な葬列




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