飲み込んだ悪夢
首の大きな傷痕に私は触れてみた。その乱暴な縫合痕は、少しだけざらりとしている。
ひとつの椅子とひとつのテーブルがあって私はその椅子に座っていた。
その上には空のスウプボウルが乗っていた。あたりは嫌に明るくて、とても間の抜けた構図だと私は思う。あまりに何の音もしない。あぁこれは夢なのだな、とぼんやり思った。
スウプボウルをじいと見つめていると、音もなく彼が現れた。黒い煙のような彼は、その青い目で私を寸の間見つめると、スゥとボウルの中へ溶けてしまった。
コールタールのような黒で満たされたそれは、持ち上げてみるとたいそう軽く、水面に微かに波がさざめいた。
私はボウルの縁に口をつけ、そして、
飲み込んだ悪夢
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