どうか、赦さないで欲しい
崩れ落ちた時臣を見て、奴は確かに笑っていたと後にギルガメッシュは語った。
傍らに居た本人もそれを否定はせず、むしろ肯定するように笑った。
「……なんでそれを私に言うの」
「時臣師を慕っていたお前には、言っておくほうが良いと思ったからだ」
あまりにも何気ない口調で言った奴。
思わず懐から出したナイフで綺礼に掴みかかろうとした私を、ギルガメッシュが止めた。
「やめておけ、お前ごときが歯向かってもすぐに殺されるがオチだ」
「殺されるかもしれないけれど、それでも私はこいつを許せないわ!」
私がそう叫ぶと綺礼は目を細め、許しなどほしくはないと呟いた。
そしていまだ羽交い絞めにされたままの私の頤に手をやって上向かせる
「これからお前は、俺を許せないままその俺に一生愛されて生きていくんだ。」
ちらとでも赦そうだなんて思ったら、その瞬間に殺してやろう。
時臣を殺したときときっと、同じ表情で奴は笑った。
どうか、赦さないで欲しい
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