生殖器は静かに嗤う
あんなろくでもない男より、オレの方が何千倍も上じゃないっすか。
顔だって学力だって運動神経だって性格だって。(学力と性格について本当のことは詳しく分からないけれど、こういうセリフに大切なのは何より、強気だ)
そうやって俺が考え抜いた言葉は、彼女の泣き顔によってオレの頭からもろくも崩れていった。さながら砂上の楼閣のようだ。いやまぁ、本当の意味は違うけど。
彼女はオレを視認するやいなや、背中を向けてうずくまってしまった。
やっぱりかぁ、と空を振り仰ぐ。うんざりするほど青い。告白するなら夕焼けの屋上であるべきだ。体育館や校舎裏がベストなのかもしれないけれど屋上っていうの事態は中々にいい選択じゃないかと俺は思う。
彼女にそっと近づいて隣に座る。逃げられないということは、少しは期待していいんじゃないだろうか。膝を丸め顔を伏せたままの彼女の手を握る。暖かい。
彼女の泣き顔に胸がえぐられるような思いをしていたのに、彼女の手の暖かさに満たされたような気持ちにもなっている。まったく単純なものである。オレ。
(けれど告白はまだしないっスよ。勝てない戦いはしたくないんで)
生殖器は静かに嗤う
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