途切れた祈り

「先輩は誰にでも優しいから」
目元を真っ赤に腫らした奴が、そう唐突に言った
「……は?」
「涙ぐまれながら告白されたらどうせ、男でも女でも部屋に呼んで慰めるんでしょう」
「なんだよそのタラシ 俺はいつか刺されそうなそんな事しねえよ」
じゃあなんで俺を部屋に呼んだんですか
改めてまっすぐ見つめられてそう問われると一瞬つまる けれどすぐに覚悟は決まった
たまにはばか正直であるべきだ
「そんなの、お前のことが好きだからに決まってるでしょうが」
一瞬の沈黙のあと奴は顔を真っ赤にさせてそしてまた泣き出した。酒が入ると泣き上戸になるのか覚えておこう
「泣くな」顔を見ないようにして抱き寄せよしよしと頭を撫でる
何とも思われてないかと思ってましたなんてそんなの、こちらの台詞である
「お前こそな、そもそも恋愛なんて興味ねえなんて感じだったじゃねえか」
「一目惚れでした」
照れ臭さをはぐらかそうとしたのだが、完璧に逃げ場をなくされた
「……俺もだよ」
それでまたさらに泣き出してしまった奴が落ち着くまで俺はずっと背中を撫でていた

しばらくして奴が、手を繋いでいいですかと聞いてきたのでもちろんいいよと答えた
遠慮がちに左手を握りしめた奴は、ぽつりと呟いた
「おれ、ずっと先輩と手を繋ぎたかったんです」
「……これから何回でも繋いでやるよ」
「よろしくお願いします」
奴のこんな笑顔初めて見た
動揺を悟られないようにふいと顔をそむけた

途切れた祈り



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