花は手折らず愛でるもの

臆病だと言われればそれだけかもしれない、けれど。

花がしおれてしまうのが、怖かった。

「ねぇ、若松くん、私ね、」

だけれども、

「好きな人ができたの、」

そうして彼女が告げた名前は俺もよく知る、ひとつ上の俺が尊敬しているキャプテンの名前だった。

「それでね、先輩が卒業してしまう前に告白しようと思うの」

(あの先輩には、もう彼女がいることを俺は知っている)

やめておいたほうがいい、だとかそういう言葉を吐こうとして失敗した。

花は、自ら手折られたのだ。

(がんばれ、とは結局言うことができなかった)

花は手折らず愛でるもの



[目次]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -