触れたら消えてしまう

中学時代、好きだった男の子がいた。多分、彼も私のことが好きだったのだろう。うぬぼれかもしれないけれど。

しかしながら私から彼に触れることはなかった。

彼はあんまりにも儚げで、うっかり触ってしまったりなどしたら跡形もなく消えてしまうのではないか、そう私は思っているのである。

幼稚だと笑われてしまうかもしれない。しかし私はいまでもそれを信じている。彼は気がついたら隣にいたり、いなかったりするのだから。

ところで、あれはいつのことだろう。友人が泣きそうな顔をして私にいった。

「テツくんが、見つけられないの!」

彼はあんなに打ち込んでいたバスケ部をやめ、以来頑としてバスケ部に関係するすべての人との接触を断っていた。

(きっと彼はもう戻っては来ない。解けて消えてしまったのだ)


私には、そんな妙な確信があったのだ


触れたら消えてしまう



[目次]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -