焼け焦げた憧憬

もういいんだと彼女は言った。ぱちぱちと木の爆ぜる音が聞こえる。

彼女はそこに手紙を放り込む。火の勢いが強くなる。

芋でも焼いたら美味しいんじゃないかなぁ、と僕は言ってみる。

気の利いたことなんて言えなかったのだ。

本当にいいの?と僕は聞く。いいのよと彼女は言った。

「女の恋は上書き式って言うじゃない?」

焼け焦げた手紙の成れの果てが、鉛色の空に吸い込まれていった。

たしか手紙の差出人は彼女の、憧れの先輩、だったような気がする

焼け焦げた憧憬




[目次]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -