憂鬱に縛られているのは
つまらないな、と彼女はぼやく。そうして大きなため息をつく。
「ため息をつくと幸せが逃げるっスよ」
「あんた充分に恵まれているじゃないの」
そりゃあ俺は顔も運動神経も頭もいいけれど、と言うと嫌味か、と睨まれた。
「というか黄瀬って、つまんないだとか退屈だとか、そういうことあまり言わないよね」
「そうっスねぇ。あぁほら病は気からって言うじゃないスか」
「つまり退屈は病気だと?」
「退屈は人を殺せると、オレは思うんスよね」
「そうだね、黄瀬いっつもつまらなそうな顔してるもんね。」
この前の体育、サッカーだっけ、死んだ目でリフティングしてたもんね
彼女もまた死んだ目でそう言う。死んだ目の癖によく見ている。
「ね、見つかるといいね、すごいやつ」
礼を言うべきかどうか迷っているうちに、チャイムが鳴った。
憂鬱に縛られているのは
[目次]