形無き物への抱擁

たしかに今日はその日なのだ
彼は相変わらずふらふら池袋にでも出向いているのだろうけれどこれは自分の単なる自己満足というか、好きな漫画の台詞を借りていうならば、余計な真似、というわけである
波江さんに手伝ってもらって何か作ろうかとも思ったけれど残念ながら彼女は今日はお休みである 弟さん関係の用事があるそうだ
なので今しがた買ってきた二人用の土鍋を利用して、鍋を作っているのだ。まぁ具材の下ごしらえなのだけど
彼が甘党だったかいまいち記憶があいまいなのでケーキは小さいものを買ってある さすがに二十数本も蝋燭は立たない
ネギを刻み終えたくらいにがちゃりと玄関から音がした
「おかえりなさい」と私は玄関を覗く
そして彼にぎゅうと抱き締められ抱き締めかえすのだ
今日という日ごと抱き締めるつもりでめいっぱい抱き締めてやろうと思う

形無き物への抱擁



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