喀血した血が甘い

げふ、と路地裏でひっそりと咳込む
お世辞にも綺麗だとはいえない薄汚れた壁にずるずるもたれかかった間桐雁夜は、狭い夜空を見上げた
彼のサーヴァントであるバーサーカーがちょうど雁夜に向かって急降下しているところであった
「お疲れ」
雁夜の労いの言葉にバーサーカーは鎧を脱いで一礼した
この病弱な主が、彼の魔力不足で己が活躍させられないことを気に病んでいる事を知っているバーサーカーは少しだけいたましげに目を細め、ゆっくりと雁夜の腰を抱いた
雁夜の口元にはさっき吐いた血がこびりついていた
それをそっと何気ないように舐めとるバーサーカー
「こら、くすぐったい」
たしなめるように頭を撫でる雁夜は血をなめとられた事に気がついた様子もない。今までそうだったようにこれからもそうなのだろう そう黒い騎士は思考する
(甘い、)
そして、こっそりと喉を鳴らした

喀血した血が甘い




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